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お父様、僕の命はもう長くないようです。
というのも、友人、知人、近所のおばさま達から僕が家にいる時間帯に、あらゆる場所で僕の姿を見たという話を聞いたからです。
お父様は「ドッペルゲンガー」をご存じでしょう?
ええ、そうです。
アレです。
ドッペルゲンガーの目撃場所はどんどん僕の家に近付いてきています。
5日前は四丁目の松本写真館。
昨日は二丁目の豆腐屋の前。
恐らくは、今日あたりに僕の所に来るでしょう。
僕は恐ろしくて仕方ない。
恐ろしくて仕方がないのです。
妻にはまだ話してません。
恐らく、夕方に帰ってきた妻は僕の死体を見、この手紙を読むでしょう。
願わくば、アレに会う前に妻に会いたかったのですが、それは叶いそうにありません。
玄関を開けた音がしなかったのに、この部屋に向かってヒタヒタと足音が近付いてきているのです。
ここまでが夫が書いたお義父様へ向けた手紙でございます。
お義父様にはお知らせ致しませんでしたが、夫は半年程前から精神の方の病を患っておりました。
この日、私が帰宅して見たものは、鏡を指差し冷たくなった夫の姿でした。
あまりにもむごい最期でございます…
(略)
それではまた。
草々
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