旅に行く支度は入念にね、馬越君。

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                        シャリシャリシャリ……。耳に聞こえのいい音が聞こえてくる。 『………………』 ふと、目を覚ました。 『………ん……なんの音だ……?……いや、ここは……どこ……病院………か…?えーと………たしか……俺は………』 いろんな事が頭をよぎる。 「あっ!目を覚ましたんだね!?よかったぁ~」 聞こえのいい音が止み、コトッと物を置くような音が聞こえた。 「ずいぶん心配したんだよ?でも本当によかったなぁ~。まさかとは思うけど、俺が誰かは……わかるよね?」 わかるさ。 「霜ちゃんでしょ?ずっと看病しててくれたの?ありがとう」 増田はゆっくり体を起こし、霜ちゃんと目線が合う位置まで体を反らした。花瓶の横に皮をむきかけのりんごが置いてある。なるほど、音の正体はりんごか。 「いや、ずっと看病してたっていうか、交代制だったんだよね。で、たまたまこの時間は俺だったんだよ」 時間を見ると、5時過ぎくらいを指針が指していた。夕日が出ているところからみて、多分夕方だ。え、夕方? 「今っていつなんだ?俺ってどれくらい寝てた?」 検討がつかない。たくさん寝たのは確かだろうが。 「えぇとね、増田が負けてから3日経ったよ。まあ俺達は村の修理だとか買い物だとかしてたけど」 「3日!?本当に?俺スゲー寝てたんじゃん!てか、俺負けたの?そっか……。やっぱ強かったもんなあ。 少し間があいた。相手の事を思い出しているのだろう。 そして増田は口を開いた。「お願いがあるんだけど、みんなが来た時の事ちょっと教えてくれない?あんまり覚えてないんだよね」 殴られまくって意識が定かではなかったのだろう。霜ちゃんは、いいよと言って増田にすべてを教えた。
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