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「どうかしたのか?」
仲間に肩を叩かれてふと我にかえる。
いつものように彼の姿はもうそこには無かった。
ゆるく頭を振り、雪まじりの風が吹き付ける灰色の空を見上げて応える。
「いや、そろそろ吹雪きそうだと思っていたんだ」
「そうだな、早いうちにあいつを連れて山を下ろう」
遺体を残して行くわけにはいかないと、ありあわせで用意した担架を指差して言う。
自分も含めて残った三人の内一人は女性だ、ここは自分達二人が担ぐのが妥当だろう。
「ああ、行こうか」
いちど目を閉じ、心を切り替えて担架の元へと向かう。
今はただ冷えきった心と身体を温めたいと、何よりも家に帰りたかった。
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