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次の日から、サクラはぱったりと隠れ家に来ないようになった。
『彼女に会う前に戻っただけだ』
そう思えたのは最初だけ。
次の日も。
その次の日も、サクラが隠れ家に来ることはなかった。
いつしか僕は、彼女のいる病棟を見つめるようになっていた。
陰気で息苦しかった病室から、逃げるように、この隠れ家へとやって来ていた毎日。ここだけがこの病院の中で、自分のいられる場所だった。
しかし、今はその隠れ家さえもが、病室と同じ鬱陶しい空気に満ちている。
「くそっ!! 何で来ないんだよ」
隠れ家には、ただ虚しく僕の声が響くだけ。ついに僕は、彼女が来るのを心待ちにまでしていた。
『人と触れ合えないのは寂しすぎるでしょ?』
彼女の言葉の意味を心から噛み締め、僕は日が暮れても、来ることのない彼女を1人待ち続けていた。
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