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 僕は人が嫌いだ。  仲の良さそうな人間が、互いのいないところでは陰口を叩き、周りの人間はどちらにもそつなく接して、また裏で悪口を言う。  人と人との間に、明確な繋がりはなく、拙い感性と環境によって結ばれ、まとめられ、それらが壊れればいとも簡単に互いの関係もなくなる。  もちろん、世の中そんな人間ばかりではないかもしれない。だが、少なくとも僕の周りはそんな人間で溢れかえっていた。  僕だって小さな頃は、仲のよい友達がいた。  だが人はあまりにも無力で、そのくせに他の何かのせいにしたがる。  別に自分が優れているとか、自分ならそんな人間には絶対にならない、とか。そんな自信は微塵にもない。  彼女の言った通り、僕は怖くて。僕のいない所で誰が何を言っているか分からない。  そして、いつか僕もその環境に取り込まれて、そんな人間になってしまうんじゃないか?  彼女の言う通り。いつからか僕は、人から目を背け、耳を塞いで生きてきた。 「俺は間違ってない……俺は間違ってない」  日も陰った隠れ家で、僕は呪文のように繰り返し呟いた。
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