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「んん……」
ベッドの中、寝返りを打った僕は、指先に触れる柔らかな感覚と、瞼越しに揺れる強い日の光で目が覚めた。
7月16日
今年もこの日がやって来た。
重い眼瞼をこすり、覚醒しきらない頭で暫く天井を見つめていた。伸びをして体を起こすと、右手の先にウィルのしなやかな毛並みが、かすかに触れた。
「おはよう、ウィル」
そう言いながら頭を撫でてやると、ウィルはまるで、床をはたく様に尻尾をパタパタさせ、喉を鳴らしながら前脚で僕にのしかかってくる。
「こら、ウィル。ベッドに乗ってきちゃダメだよ」
ウィルは残念そうに一度鳴くと、ベッドから降り、鼻先で扉を押し開けて部屋を出て行った。
「朝ご飯にしよう。新聞を取ってきてくれるかい?」
ウォン
彼はとても賢い。扉の向こうからは、こちらの言葉を理解したような元気な鳴き声と、足早に階段を降りる音が聞こえた。
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