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僕はベッドから抜け出て顔を洗い、簡単な朝食を済ませ、庭先を見つめていた。
チュン、チチュン、チュン
開け放した窓から聞こえてくる鳥の声が
チッ……チッ……
徐々に大きく感じる時計の針の音が
かろうじて、僕の意識をつなぎ止めていた。
机の下からいきなり顔を出したウィルにも、意識を取られることもなく、僕はどこともない一点をただ見続けた。
「大丈夫だよウィル、そろそろ行こうか」
やっと僕の足は動き出した。読んでいた新聞をソファに放り、慣れないスーツに腕を通す。内容なんて見出しすら、頭には入っていない。
ウィルを連れ家を出ると、蒸すような暑さと、眩しい日の光に身を包まれる。車に乗り、エンジンをかけても、心はここを離れてはくれなかった。
きっと来年も、その次も。
1つずつ歳を重ねた僕が、同じ今日を繰り返すのだろう。
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