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墓石に水を掛け、花を手向ける。命日と彼岸には、と墓石の前に置かれた彼女の遺影。
3年経った今も、遺影の中で笑う彼女は変わらず、いつしか僕は20歳になろうとしていた。彼女を見る度、抑えていた衝動が胸を叩く。
いつしか僕は時が流れるのも忘れ、ただその場に立ち尽くしていた。
いつだったか、彼女に聞かれたことがある。
『自分を必要とする人がいない世界と、自分が必要とする人がいない世界。リョウ君はどっちがつらいと思う?』
あの時は笑ってごまかしたが、今なら分かる。
「サクラ、やっぱり、自分を必要としてくれる人がいないと凄く寂しい。けど、自分に必要な人がいない世界は、もっとつらいよ」
風に流されていったその言葉は、誰の元へ届くでもなく、ただ虚しく、僕の中へと帰って来るだけだった。
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