第2章─黒兎

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まだ 頭上には 紅い月が妖しく輝いている そして 俺は街灯の下で通り魔と正座で話合っている。 そろそろ 遅い時間になってきた。 家に電話した方が良いだろうか。 っていうか なんだろ この状況… 「僕の名前はトリスタ.ディウーティフル=ラビット。ハートの女王の黒兎です。 アリト、好きです。結婚してください」 真剣な面持ちでの自己紹介。内容はかなりの電波系だ。 なんだか間の抜けたBGMが流れてきそうなこの空間。さっきまで、俺が此処でこの男に殺されかけていた事など想像できないだろうよ。 だけど事実だ。 その証拠にさっきまで俺が転がってた場所を見ると真新しい赤黒い跡がコンクリートにこびりついている。 そして今、その少し外れた街灯の下で俺は五体満足で座っている。 「…あの、さ。 なんで俺を殺そうとした訳?誰かに命令されたの??」 俺は相手の顔をなるべく見ないように視線をそらして質問した。 「はい。ハートの女王にアリトを殺して連れてくるように命令されました。 アリト愛してます。」 先ほどから質問する度に返ってくる答えに付着している告白めいた言葉は彼の国のしきたりか何かなのだろうか。 あまり深く考えないでおこうと思う。 いや。 先ほどまでなら「キモイ!!」とか「ふざけんな!!」とか怒鳴れただろうが、そうもいかなくなってしまった。 話をする為に街灯の下なんかに移動したのが悪かった。 今まで変質者ってのは こー…なんだろう。 むさい!っていうか… 一目で『こいつ変態だ!』って解るモンだと思い込んでいた。 しかし現実って違うんだなぁ~ すんげぇ 美形だ!!!!!! 男の俺が言うのって おかしいかもしれないが これが美形だってのは 俺でもわかるよ!!!! 黒い髪の毛サラサラだし。顔は整って綺麗だし。 俺の貧困な語学では、ちょっと説明できないのが悔しい。 俺と年がそほど変わらないらしいが、学校にいる女子にキャーキャー言われて上せあがる少し顔の良い男子なんて目じゃネェぜ!!!! ってかんじで、俺の人生の中で見た美形ランキングの文句無し1位だ。 と、俺の頭の中では 好きなアイドルに会ってしまった女子高生のように盛り上がっていた。 そんな美形から「好きです」とか言われちゃうと、嬉しくはないけど なんだか得意気な気分になって悪い気持ちはしない。
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