第2章─黒兎

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「女王のハートは貴方が死なないと手に入らない。 此処にいると次の追っ手が来ますよ。 それともアリトは………………死にたい?」 最後にゾッとするような視線を向けられて、俺は一生懸命に首を横に振った。 死にたくないのは確かだが… わからない事が多すぎる。 それに…… 「……アンタ、女王様の…その兎…なんだろ? 良いのかよ。自分の主人裏切るような事して、さ」 そうだ。 この男は女王に命令されて俺を殺しにきた、と言っていた。 なのに、そのターゲットを助けるような真似なんて、自分にメリットなんてあるはず無いだろう。 この男がどんな組織の人間なのか、それともたまたま女王って人に依頼された殺し屋みたいな職業なのか…どちらにしろ俺を助けて彼が得する要素は見付からない。 「……なんで、俺を守ってくれるんだ?」 俺を引っ張る手の力が抜ける。 兎の表情は驚いた様な、キョトンとした表情で固まっている。 「……なんでって…さっきから言っているでしょ?アリトが好きだからです。」 しごく当たり前のように キッパリ言われてしまってなんて言えば良いのかわからない。 さっきから彼の語尾に付いていたのは「~にゃん★」とか「~だっちゃ」みたいなキャラ作りの為の物じゃなかったらしい。 俺の事好きって… 「………本気?;」 兎はコクコクと首を動かす いや。 さっきから浴びさせられていた告白のオンパレードは聞こえてはいたんだが、俺の脳が冗談と認識していたらしく聞き流してた節があった。 それに、今日の出来事のどの辺に俺に惚れる要素があったのか……。 「……その…、好きって…おたくの国では…「求愛の言葉ですが。此方の世界では違うのですか?では、わかりやすく…『愛している。この場でいますぐ抱き締めたい』…と、でも?」 ただ一つの希望も撃ちのめされた。 彼の国の過剰な友達希望方法とかかなぁ~とか思ったが、友達同士の「愛してる」とかゆーのは女子高生の冗談半分の友愛表現でしか活用してほしくない。 少なくても、俺は。 其処ら中の友達同士が「愛してる」なんて言い合う日本なんかには、特殊な事情がない限りは住みたいなんて思わない。
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