第3章─普通すぎる日常

2/7
前へ
/159ページ
次へ
全て 全て 夢だったんだ。 黒兎… 紅い月… ハートの女王… 血の契約… あの 死の恐怖さえも 夢なのだと言われれば納得する。 だって、空はこんなに明るい!! 窓を開ければ風がフワリと部屋に入ってきて起き抜けの頭をスッキリさせてくれる。 今日も仕方なく学生服に身を包んで通学路を……………………………………………いや、止めておこう。 今日はどうも 此方の道は通りたくない。 遠回りでも良い。 違う道を通ろう。 夢は…夢だが、朝から自分の血がこびりついてたコンクリートを見たいとは思わない。 だから、夢のあの道は避けての登校となった。 (まぁ、遠回りって言ってもそんなに変わんないし、遅刻はしねぇだろ) 「よっ!あ~りと!!」 後ろから肩をポンッと叩かれて振り向く。 振り向いた其処には 赤いプラスチックフレーム眼鏡がよく似合う少年が手を額にかざして敬礼ポーズで立っていた。 「あ。織彦…ぉはょ」 俺は元気が無いのを隠そうともせずに、たぶん親友と言えるであろう人物に挨拶した。 この眼鏡少年は赤城 織彦(アカギ オリヒコ)一応俺の小学からの幼馴染みで一番親しい悪友である。 「ん~?どうしたね??朝霞市隊員。顔色がすぐれないよ~っ。」 ふざけたかんじで俺を覗きこむ織彦を軽くあしらう。「そうなんですよ。軍曹~。具合が悪いんで、今日の軍議は欠席してもよろしいですかぁ~?」 冗談で大袈裟にふらついてみせようとしたら、いきなり景色が歪んだ。 フッ、と意識が遠くにいく。 気力で地面に踏ん張って体勢を立て直した。 ドクッ… ドクッ… 心臓が苦しい。 心音がうるさい。 冷や汗が止まらない。 「……お、おぃ…亜里兎…お前大丈夫か?!!;」 今度は真剣に心配している親友に、安心させるように笑ってみせた。 いや、たぶん余計に不安になるような笑顔だったとは思うが。 風邪でも引いたのかと自分の額に当てようとした手を見て驚愕した。 正確には…指、俺の小指が 血管が浮き出てるみたいにいくつもの赤い線が絡み付いて痛いくらいに締め付けている。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

944人が本棚に入れています
本棚に追加