第3章─普通すぎる日常

4/7
前へ
/159ページ
次へ
「お前達にこんなに毎日のように言うのはなぁ!お前達の将来を考えてるからなんだ!!」 少々、血圧の高そうな教員が拳を奮わせながらシャウトする。 (教師ってなんとなく、こんなセリフが好きだよね。いや、これも偏見だけど) 「お前達の学生生活は残り少ないんだ!!」 (わかってるなら 残り少ない学生生活とやらを謳歌させていただきたいんだが…。) 進路指導室に連行された生徒は横一列に並んで 『早く帰らせてくれ!!』という切実極まりない要望を包隠さず顔に出していた。 そして これから1時間は続くであろう初老を迎えた熱血教師の熱弁を永遠聞かされる…………と、思いきや、意外な所で意外な助っ人が登場した。 トン トン 「失礼します」 模範的なマナーで部屋に入ってきたのは織彦だった。 (なんか用事か?) と、教員の肩口から口パクで聞いてみると ニャリという効果音と共に (任せろ)と、口が動いた。 おっ… これは期待しても良いのだろうか…。 俺は先生に見えないようにガッッポーズした。 これで取り合えずは、早目に帰れるだろう。 「赤城。どうした? なんか用事か??」 先生は優等生が来た事によって少し機嫌が良い。 そういえば織彦は学年でも成績が良い方だと自画自賛している。 俺はそんな嫌味な事には興味がないので、アイツが頭良かろうが悪かろうが、マサチューセッツ工科大学を噛まずに言えようが、腐れ縁の幼馴染みには変わらない。 「先生…。お忙しいところ申し訳ないんですが…。 緊急で…」 無駄に演技っぽい しおらしさが不気味だ。 「ど、どうした?!!」 「…それが…朝霞市君のお母さまが倒れたって…」 「「えぇえぇぇ?!!!!;」」 教師とハモったのは俺の声だ。 (織彦!! 不味いよ!!!! それはバレるよ!!!!! 第一、家の人間はそんな大事な事を俺より先にお前に知らせるんだよ!!!;) あんまりに酷い嘘に 頭を抱えるしかない俺。 そして驚愕してフリーズしている先生。 何故か自分の小学生並の嘘に自信満々の織彦。 息が詰まる時間が過ぎていった。 ………そして 「朝霞市!!!!! お前なんでボケッとツったってんだ!!!!?;急いで帰れ!!!!!!!」 「あっ。僕、教室から鞄持ってきます」 慌てたように織彦は一足先に部屋を出ていく。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

944人が本棚に入れています
本棚に追加