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先生に一礼すると
俺は織彦に続いて部屋を出た。
残された生徒には悪いが、せっかく織彦が作ってくれたチャンスを無駄にはできないし、此処にいる全員を助けだす機転なんて俺には浮かばなかった。
案の定 ドアをくぐる時に見た生徒達の顔は
絶望に染まっていた。
大袈裟に聞こえるかもしれないが、この時期の俺たちにとって時間というものはそれほど大切だという事だ。
(すまん皆!!無力な俺を許してくれっ!!!)
ガラッ…
部屋から出ると廊下は少し寒くて室内との温度差に身震いした。
「助かったよ。織彦。…でも、なんでもっとまともな嘘つかないんだよぉ…。これで明日からややこしくなる…」
学校の噂ってものは広まりやすい。
しかも、職員ルートとなれば尚更だ。
明日から俺は極力職員室に行くのを避けなければならなくなった。
先生に会う度に「お母さんは大丈夫なのか?」と、もちろん元気な母の話を持ち掛けられるのは心苦しい。
「ゴメンゴメン。あの先生には、こんな話が一番効くと思って…」
織彦は全然反省の色を見せずに笑った。
「……は?」
「いや、あの先生この間、休憩室で『親子、感動24時間スペシャル』観て号泣してたから…こんな話に弱いのかなぁ~って。」
「………」
あぁ、可哀想な教員のみなさん。
貴方達が優等生だと信じてる男は貴方達を上手く利用する為に日々、観察しに行ってるようですよ…
気を付けて下さい。
アーメン(キリスト教じゃないけどね、俺。)
そんな話をしていたら俺たちのクラスに着いた。
さっさと鞄持って帰ろうと思ったんだが、そうは問屋が許さなかった。
「………亜里兎。」
「…んー?」
昼に購買で買っておいたスポーツドリンクをがぶ飲みしながら織彦を横目で見る。
今日は朝からなんだか喉が渇いて仕方ない。
飲み終わったペットボトルはこれで3本目だ。
「…亜里兎さぁ。
昨日なんかあったの?」
「Σブッフ──!!!?;」
俺は摂取していた大切な水分を空中に吹き出した。
そんな事を聞かれるなんて思わなんだ。
おもいっきり器官に入って大いにむせる。
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