第4章─兎の穴に墜ちる

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後ろから声がする。 だけど俺は振り向かなかった。 この声を聞くのは今回で2度目になる。 聴き心地が良いテノール。一度聞いたら忘れられないだろう。 しかし、俺の記憶の中では綺麗な記憶として残っていなかった。 当たり前だ!! 俺は一度コイツに殺されかけている。 「…アリト。 何故扉を開けないんですか…?」 あの声が同じ事を聞いてきた。 俺は振り返らずに半やけくそで答える。 「開けたくねぇから開けねぇんだよ!! お前に関係ないだろ!!」 「関係あります」 直ぐ様反論されて俺の頭の何処かでプチン、という音がする。 やっぱり俺もキレやすい世代なのか…?; いやいや。 殺されかけた時にそんなに文句もなんも言えなかったし…まぁ、一発殴ったけど…。 キレるのも仕方がない。 むしろ譲歩した方だ。 「何がお前に関係あるんだよ!!?早く俺を家に帰せ!!もう俺の前に顔出すんじゃねーよ!!」 感情に任せて振り返ってしまった。 しまった…それが悪かった。 「……あ…でも……。アリト……僕は…うっぅ」 Σボロ泣き???!!!!!!; 俺より身長の高いたぶん年上の美形を泣かせてしまった!!;;; ウチの姉に言わせてみれば美形が世界の宝なら 美形の涙はレッドアニマルと同じ扱いなのか??!! 貴重なのか?!! 保護しなくていけないのかッッ???!!!!;; (ど、どうすれば…!;) 俺がテンパってオロオロしてるうちにも美形は号泣続行中だ。 既に足元に涙で作られた池が出来ている。 「Σって、なんで涙で池ができんだよ?!!;」 そうだ。 普通に考えておかしい。 人間がそんなに泣いたら干からびてしまうんではないだろうか。 しかし、美形の涙は止まる事を知らない。 部屋は洪水。 水位は今や俺の腹の位置まで来ていた。 「ど、どうすりゃ良いんだよ…どうすりゃ………Σはっ!!」 周りを見回すと、さっきのテーブルが起用にもバランスを崩さずにプカプカ浮いていた。 上を見ると怪しいピンクの飲み物。 「…あ、あれだよな。 こーゆーパターンだと…こんな薬飲めばめちゃくちゃ強くなったり…不思議なパワーを手に入れたりして、事件解決なんだよな??そうなんだよな?な??」 答えなんか返ってくるはずもないんだが、誰かに聞きたくて仕様が無かった。
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