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後ろから声がする。
だけど俺は振り向かなかった。
この声を聞くのは今回で2度目になる。
聴き心地が良いテノール。一度聞いたら忘れられないだろう。
しかし、俺の記憶の中では綺麗な記憶として残っていなかった。
当たり前だ!!
俺は一度コイツに殺されかけている。
「…アリト。
何故扉を開けないんですか…?」
あの声が同じ事を聞いてきた。
俺は振り返らずに半やけくそで答える。
「開けたくねぇから開けねぇんだよ!!
お前に関係ないだろ!!」
「関係あります」
直ぐ様反論されて俺の頭の何処かでプチン、という音がする。
やっぱり俺もキレやすい世代なのか…?;
いやいや。
殺されかけた時にそんなに文句もなんも言えなかったし…まぁ、一発殴ったけど…。
キレるのも仕方がない。
むしろ譲歩した方だ。
「何がお前に関係あるんだよ!!?早く俺を家に帰せ!!もう俺の前に顔出すんじゃねーよ!!」
感情に任せて振り返ってしまった。
しまった…それが悪かった。
「……あ…でも……。アリト……僕は…うっぅ」
Σボロ泣き???!!!!!!;
俺より身長の高いたぶん年上の美形を泣かせてしまった!!;;;
ウチの姉に言わせてみれば美形が世界の宝なら
美形の涙はレッドアニマルと同じ扱いなのか??!!
貴重なのか?!!
保護しなくていけないのかッッ???!!!!;;
(ど、どうすれば…!;)
俺がテンパってオロオロしてるうちにも美形は号泣続行中だ。
既に足元に涙で作られた池が出来ている。
「Σって、なんで涙で池ができんだよ?!!;」
そうだ。
普通に考えておかしい。
人間がそんなに泣いたら干からびてしまうんではないだろうか。
しかし、美形の涙は止まる事を知らない。
部屋は洪水。
水位は今や俺の腹の位置まで来ていた。
「ど、どうすりゃ良いんだよ…どうすりゃ………Σはっ!!」
周りを見回すと、さっきのテーブルが起用にもバランスを崩さずにプカプカ浮いていた。
上を見ると怪しいピンクの飲み物。
「…あ、あれだよな。
こーゆーパターンだと…こんな薬飲めばめちゃくちゃ強くなったり…不思議なパワーを手に入れたりして、事件解決なんだよな??そうなんだよな?な??」
答えなんか返ってくるはずもないんだが、誰かに聞きたくて仕様が無かった。
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