第1章─ベルが鳴る

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比喩とかではなく… 本当に俺の夢の中の話。 …そう、俺の最期の一日は夢から始まった。 その夢で俺は なんだか夢と一目でわかるようなフワフワした雲の上に花畑をひきつめた場所に立っていた。 其処には誰もいなくて、美しい景色のはずなのに… なんだかとても寂しかった。別に俺が寂しがりとか…そうゆう訳じゃなく、何故か其処には『何か』が足りないと思ったんだ。 なんとなく気の向くままにそこをさ迷うと腹が減ってきて、俺は食べられる物を探す。 キョロキョロと視界を動かせば少し放れた所に林檎の木があった。 俺は迷わずその木に駆け寄る(余程腹が空いてたらしい、俺。)と林檎を一つもいで服の端でそれを軽く拭く。 何も考えないで、林檎を口にしようとした瞬間─── 俺の耳元で誰かが囁く。 それはけっして大きい声ではないのに、鼓膜に張り付くような…背筋が凍るような………兎に角俺はその声を知っていて、出来ることなら二度とは聞きたくない声だった。 『いいの? 食べたら…戻れなくなる。それでも…食べるの?』 正直何を言いたいのかわからなくて、俺はその声に反抗意識を燃やし おもいっきり林檎にかぶりついた。 カリッ… おもいきり食べるはずだったのに勢いをつけたせいか的が外れて端っこを擦り減らしただけだった。 そして、気をとりなおしてもう一度噛み─ ──────────── ──────────── ─『あぁ、戻れないよ』。 ──え?、と思った時には もう手遅れだった。 声の意味を確認する間も無く、俺の足場が大きく揺れだした(地震嫌いの俺の母には耐えられない程のマグニチュードだと思う。)周りの景色も黒く溶けていく…。花畑は泥のように…虹色の空は灰色に… 俺が食べていた林檎も クシャッ…と、音を立てて俺の掌から溢れ落ちる。 落ちた林檎を視線で追うと干からびていて砂のようになっていた。 段々 段々 世界が壊れる 終には俺の足場まで崩れてきて……… なんの抵抗もできぬまま 俺は 雲の上から落っこちた。
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