第1章─ベルが鳴る

4/9
前へ
/159ページ
次へ
雲から落ちた先は 地上か…?と、思いきや 地上は地上でも 良く知る我が家の俺の部屋。 つまり、そこで妙な夢は終わって温かい自分のベットに戻ってきた訳なんだが… なんというか、まぁ… 経験がある人もいるのではないだろうか… 例えばデパートのエスカレーターからまっ逆さまに転落する夢をみて、落ちた瞬間目を覚ましたら落ちた時の感覚を引きずったまま帰ってきてしまった、なんてことが。 俺は今、その状態で 体の中の色々ゴチャゴチャした臓器たちが夢の中の重力に敏感に反応して……… とても 気持ちが悪かった 最悪の目覚めとは まさにこの事だろう…。 しかし、朝はやってきたので学生の本分を果たす為に俺は重たい体を持ち上げて床に足を着けた。 ここで一つ大事な事を忘れていたから付け足そう。 上の文を見ればわかってもらえただろうが 俺は学生だ。高校3年。 普通こういうファンタジーとかの物語では小学生や、中学生…いっても高2ぐらいまでなんだろうが、残念ながら就職活動に追われて毎日ダルダル過ごしているファンタジーのフの字も無い崖っ淵十代だ。 そして名前は 朝霞市 亜理兎【アサカシ アリト】なんのへんてつも無い(自分で言うのも悲しいが)そこら辺にいる18歳だ。 ガキの頃は、この言いにくい自分の名前でよく舌を噛んでよく泣いたもんだ。 …………いや。それは別にいい。関係ない。 兎にも角にも 俺のいつもと変わらぬ一日は、ダルダル授業をして、放課後進路指導の先生に職を勧められて、遅くまで残されて、部活がある訳でもなく、友達も帰ってしまった中を一人悲しく夕闇に染まる空に哀愁を漂わせながら終えるはずだった。 だが、今日は違った。 いつもと変わらぬ下校中、 いつもと変わらぬ通り魔に………いやいや。 …次の瞬間、俺の背中に深々と刃物が刺さっていた。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

944人が本棚に入れています
本棚に追加