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「止めよ!アリト。
止めようっ!ホント出るから!!;」
「いや。俺だって何が出るのか言ってくれたら直ぐ様、迅速にシャットダウンするから!!;何が出るんだよ;」
猫が手と首を連動させて横に振る。
俺はそれを押しきった。
怖いもの見たさならぬ怖いもの聞きたさなだけなんだが。
ここで引くと流れ悪いじゃんか。
兎は自分が焚き付けたのにも我関せずを決めこむつもりなのか視線を空中に漂わせ何を追っているのか危ない目付きだった。
すると突然その兎が口を開く。
「来たらしいですね」
一言だけだったが、その一言で猫は「ひっ」と短い悲鳴をあげた。
「え、来たって…何が…え?!それって『出た』と同義語?!!;」
たぶん そういう意味なのだろう。
兎は相変わらず読み取れない表情で空中を見ている。
猫は雷が落ちるのを怖がる子供のようにうずくまって何やらブツブツ言っていた。
俺は何が来るのが出るのかわからないまま、奇妙な二人を交互に見ては手持ちぶさたな手を握ったり開いたりしていた。
──その時。
(…え。歌…?)
歌が聞こえる。
どこから…かはわからない。
というか、どこからも聞こえる。
まるで音に囲まれた様な感覚。
しかし その歌は大合唱というわけではなく透き通った歌声が一筋だけ聞こえるのだ。
綺麗な歌声なんだが……どことなく不安になるような…自分の存在意義なんかを、フと自分に問い掛けてしまいそうな…憂鬱になる、と言えばいいのだろうか。
悪いけどけっして
聴いていて愉快になれる歌ではないのだけは確かだ。
†To be continue…
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