第7章-神の双子

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歌は辺りに響き続けて俺の頭にも緩くこだましている。 兎は心なしかニマニマしているように見えるのだが… 猫は相変わらず怯えている。 どちらかに状況を教えてもらおうと思ったが決定的なナニカが起こるまでは、何故か声を出す気になれなかった。 「…焦がれた顔する道化師は笑顔を忘れたお人形…♪黒くまぁるい眼には~愛しいぉ人は見えるのかぃ?心がなくてもお前には~運命の方がわかるのかぃ?あな見苦しや。あな切なや~♪涙の居場所も忘れたか?」 だんだん歌がはっきりと聞こえてくる。 よく聞くと日本の民謡に似ているかんじだ。 歌がちゃんと聞こえ出すとニマニマ顔だった兎が急に眉間に皺を寄せていかにも嫌悪感丸出しの表情になった。 逆に猫はうずくまるのを止めて諦めた顔になり何かを見据えるように一点を睨んでいる。 俺は辛抱強くナニカを待っている。 少し経つと辺りに霧が立ち込めてきて一寸先は視界がなかなかに悪い事になってきた。 歌は依然として止まずにむしろボリュームが上がる一方だ。 ───その時 俺の耳元で『チリン』と 小さな鈴の音が聞こえた。 俺が振り向くより早く兎と猫が警戒した表情で俺の方を見る。 俺がスローモーションのようにゆっくり振り向こうとしたら。 いきなり視界が真っ暗になり 背後でゾッとするような温度を感じる。 背筋がピンと張る。 「「みぃ~つけた」」 右と左から二人分の… 子供の…声? ともすれば俺の視界を遮っているのは…手? 疑問に思うのは 「だーれだ」ではなく…みつけた…。 いったい何を? まるで、かくれんぼの鬼の台詞だ。 …歌は聞こえなくなっていた。 それどころか この子供の声以外 なんの音も聞こえない。 世界が閉じてしまったのかのように…。 不安で寂しい気持ちが急に込み上げてきた。
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