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「…っ、あ…ぁ」
何かを喋ろうとして
声にならなかった。
得体の知れない背後の人物がクスクスと笑う。
「のぅ…アリトや。
そんなに妾が恐ろしゅう感じるのかや?」
「余が恐ろしいかアリト。ククク…未知に恐怖するが好。なんじゃ、声が出ぬとみえる…どれ」
後ろでパチンと指を鳴らす音がした。
するとさっきまでつっかえてた喉がいきなり通るようになった。
呼吸がえらく楽だ。
今なら声も出せそうな気がする。
思った瞬間に目隠しが外された。
勢いで俺は後ろを振り返る。
─────え…と
振り向いた瞬間視界になにも映らなくてヒヤッとしたが眼球を下に向けると…
「やぁ、アリト」
「ご機嫌うるわしゅう」
みた?みたみた。
俺みーっけだもんね。(なんて某アメリカカナリアキャラの物真似はいい…)
俺は 見付けた。
「なんじゃ?妾がかわゆすぎて言葉も無いかや??」
「何を言う!余がかわゆくて声が出ぬのじゃ!…のぅ?アリト」
う、うぉお、ぉぉ
すげ、すげ…
心拍数が!!
なんだろ このよくわかんない感動はッッ!!
俺の眼下では神主さんと巫さんの恰好をした幼稚園年少さんサイズのお人形と見間違うばかりの可愛いお子さんが『余の方がかわゆい』『いや。妾の方がかわゆいのじゃ』と、これまた可愛くポカスカやっていた。
駄目だ!胸が苦しい!
俺はそんな変な趣味はない!断じてない!!
そういや、母さんがスーパードルフィーとかいう人形にめっちゃハマってて食費使い込んで父さんに怒られてた記憶があるけど…
今なら母さんの気持ちわかる。
こいつらの為なら食費使い込んでも仕方ないような気がする。
やっぱり俺は母さんの子供だったんだ。
一時期『どうせ俺は橋の下に捨てられてるのを拾われてきたんだ』とか言ってごめん。
ここに証明された。
俺は母さんの子だ!!
……いや。
じゃないな。
そうじゃないな。
違うだろ。自分よ。
落ち着けよ。
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