944人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなような空気は伝わっている。
兎と猫が俺との話を濁すのは俺の事を思ってやってくれている事なんだろう。
まるで親が子供に『お前が知るのは、まだ早いよ』と言ってるみたいに。
しかし、その場合
子供はいつの日かその答えを知る事が出来るのだろう。
俺の場合はどうだ?…。
待てば良いのか?
俺が自分で理解するまで…。
はたして その時はいつ来るのだろうか。
真実を知った時には手遅れになったりしないだろうか…。
取り返しのつかない事にはならないだろうか…。
「アリト…ごめんなさい」
いつの間にか下に向いていた視線を上げると兎が申し訳なさそうに呟いた。
「…なにも話さなくて…ごめんなさい」
まるで小さな子供の様に謝られると、こちらとしても困ってしまうんだけどなぁ…。
(なんか苛めてるみたいじゃん;)
息を吸い込むと自然に深い溜め息が出た。
「ごめんなさ「いいよ。…もういいから。お前はこの二人と話す事があるんだろ?
優しく話し合えよ。わかったか?
…あと、逃げないから…下に下ろせ」
あえて『俺に現状を話せ』とは言わなかった。…言えなかった。
今の俺の言葉を聞いた兎は「はい」と嬉しそうに…はにかむように頷くと素直に俺を下ろしてくれた。
それを見ていた猫は面白くなさそうに眉毛をつりあげた。
仕切り直しとばかりに俺以外の人間はシリアスなかんじだ。
俺もふざけたりしてる気分では決して無いが真剣になれる程その場に溶け込んでいなかった。
俺はきっと話を聞いて謎を宿題として抱えていかないといけないのだろう。
こいつらが話してくれるまで待つなんて事はしない。
さっきみたいに隙があれば聞き出して兎と猫をアタフタさせてやろう。
そう考えるだけで、なんだか心が楽になった気がする。
単純なだけかもしれないが、気の持ち様でいくらでも選択肢は見えてくるのだ。
そうこうしている内に話しは進んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!