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シー…ン
…だった。
静かだ。
俺は自分に親指を向けたまま誰かが話を続けてくれるのを待っている。
俺、アホっぽ。
(…えっと…)
なんだよ。
どうしろってんだよ。俺みたいな凡人がカッコツケ(てるつもりなんだよ。これでも!俺は!!)ちゃいけないのか。
うぉぉおぉおおぅ!!!
俺は心の中で絶叫した。
すると兎が思い出したかのように突如ブルブル震えだした。
Σぎゃあぁあぁあぁ!!
(変な病始まったぁあ!!すこぶる恐ぇーッッ!!!)
俺も兎とは違う理由だろうがブルブル震えだした。
兎の黒くて長い髪が前のめりに傾いた首に合わせて顔を覆い尽くして簾のようになっている。
今すぐにでもホラーの映画に出れるだろう。例えば呪いのビデオの井戸から這い出てくる役なんてピッタリだ☆
主演男優賞でも取れたら是非ホームパーティなんかに俺を呼んでくれるとうれしい。
「アリト…アリト…アリト…」
ブツブツと俺の名前を連呼している兎。
果てなく恐ろしい。
「…え、と…
はい。なんでしょ」
とりあえず返事なんかしてみたりしてしまったりする。
果てなく後悔。
「…何故…何故そんな事言うんですか?…何を代価に盗られるかわからないんですよ?…なんで…軽々とそんな無謀な事…」
…自分の事を棚に上げて…よくもまぁ…
「お前だって、さっき同じ事言ってただろ。それに俺は俺の事だから良いの!お前は駄目なの!」
兎は酷い膨れっ面だ。
美形台無し。
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