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周囲は何事もなかったかのように静かだ。
「…兎。これでわかったであろ?」
「この世界は壊れつつあるのじゃ…」
双子は兎を見ると憂鬱な表情で語りかける。兎は顎を中指と人差し指を支えるような恰好で腕を組んでいた。
「…思った以上に状況は芳しくない様ですね…。」
兎まで憂鬱そうだ。
「でも、次に向かうべき路はわかった…だろ?」
黙って話を傍観していた猫がやっと口を開いた。
でも、なんだか様子がおかしい…。
「はぁ…残念だなぁ…アリトぉ…もう少し一緒にいたかったよ…」
ションボリという効果音がつきそうな程ガッカリした様子で猫が項垂れた。
「…は?どーしたんだよ。」
一緒に来れば良いだろ…と、言いたかったが言う前に周りの空気が黒く滲んだ。
酸素が重くなった…
という表現で良いんだろうか。
「ホント残念。
アリト、ここでお別れだよ~。」
猫は元来た路を戻ろうと踵を返した。
「…来たか」
兎が呟く。
猫が苦笑いする。
「オレが適役、でしょ?」
猫が肩を竦めて俺に意味深な視線を向ける。
でも意味はとんとわからない。
「…え?」
俺は猫が向ける視線を逸らす事もできずにただ見つめ返す。
「…おい。うさ公」
「…なんですか?バカ猫君」
「オレが走ったらアリト担いで跳べ!…いいか…」
「……わかりました」
兎が俺の肩に触れる。
え…?
なに?なんだよ…。
「アリト。楽しかったぞ。」
「また会えると良いのぅ」
双子がニコニコと微笑みかける。
「じゃぁね、アリト。
大好きだよ…」
最後にビョウラは笑って
それから
風を感じて目を閉じて…開くと…
俺は 空の中にいた。
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