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むかしむかし。
王様のいない国がありました。
そこに、心優しい少年がいました。
少年は貧しく喧嘩が弱く頼りがいがなく、赤い髪の少女にいつもバカにされていました。
ある日少年は強くなりたくて、悪魔を呼び出しました。
少年に呼び出されてきた女悪魔は言いました。
「人間の魂と引き替えに、願いを三つ叶えてあげましょう。さあ取引きだ。魂をくれるならお望みのモノを与えよう」
悪魔は、少年の知っている人間ならば誰の命でも良いと言いました。
少年は、家族や友達の命を悪魔に渡したくはありませんでした。
けれど自分の命も渡したくはありませんでした。
そこで少年は、少年をいつもバカにする少女の魂を渡す事にしました。
「イケニエをあげよう。イケニエをあげよう。あの子の命なら僕はいらないよ」
「まあ。なんて酷い事を言う人間なんだろう。素敵だわ」
悪魔は少年を気に入りました。
悪魔は、願いを三つ叶えたら魂を渡すよう言いました。
悪魔に魂を渡すには、少年が少女を殺せばいいそうです。
少年はまず、力が欲しいと願いました。
「思っていた通り。思っていた通り」
悪魔は満足そうに笑いました。
次の日から、少年は喧嘩じゃ誰にも負けなくなりました。
けれど、少年が強くなりすぎたせいで、子ども達は力比べに興味がなくなりました。
子ども達は、賢さで競うようになりました。
少年は、今度は知識を願いました。
「思っていた通り。思っていた通り。少年は貪欲だ」
悪魔は満足そうに笑いました。
少年は誰よりも賢くなり、村一番の天才になりました。
今では、少年に勉強を教えられる人などいません。
少年はある日、皆に嫌われるようになりました。
少年が大人よりも力持ちで、先生よりも頭が良いからです。
みんなみんな、少年が羨ましかったです。
だけど、みんなみんな少年を嫌いになりました。
みんなみんな少年が恐くて、近寄らなくなりました。
「嫌われ者だ。嫌われ者だ。素敵だね」
悪魔は満足そうに喜びました。
少年は一人ぼっちになりそうでした。
けど、赤い髪の少女は変わらずに少年と一緒にいてくれました。
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