白髪の人形

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包丁を渡されたサラは、包丁の刃を見ながら桜の動作を思い出す。   頭上に包丁を持っていき、躊躇いもなく振り下ろす。   バンッ、 まな板に包丁が刺さり、ネギが飛ぶ。   「あ」   包丁を抜こうとするが、深く刺さって抜けない。   そんな様子を、頬についたネギを取りながら見ていた桜は、特大のため息をつく。   「素人だったか。貸してみろ」   サラの代わりに力業で包丁を抜く。   「いいかサラ。包丁はこう使うんだ」   トントントン、 リズム良くネギが切られていく。   サラはそれを見つめ、しょんぼりと肩を落とす。   「諦めるな。もう一回やってみろ」   包丁を手渡され、サラはゆっくりとネギに刃を押し付ける。   桜は、包丁を持つ手を掴み、包丁をネギの上で前に滑らせる。   それを数度繰り返して手を離すと、サラは自然とそれを模倣する。   横目で見守りながら、米がつかないように鍋を動かす。   「そろそろいいだろ」   米にめんつゆが染み込んだのを確認して、深皿に流し込んで、最後にネギをのせる。   「簡単な雑炊モドキの出来上がり。熱いから気を付けて食べろ」   注意して、桜は台所を出て寝室のベッドに戻る。サラも同じようにベッドに座り、桜を見る。   視線に気付いてサラを見ると、作った雑炊モドキを食べていないことに気付く。   「一応食べれるはずなんだが」   サラも雑炊モドキを見るが食べようとせずに、首を傾げる。   「なに、これ」   桜は絶句した。男の手料理を否定されて。   「なにって食べ物だ」   あろうことかサラは、指を雑炊モドキに突っ込む。   熱さに耐えられるはずもなく、指を抜いてくわえる。   「まさか食べ方も知らないからオチじゃないよな?」   首を傾げる白髪に、桜は肩を落とす。   「わかった、よくわかった。一から十まで全部教えてやる」   投げやりに扱うよりも、しっかり面倒をみたほうが良いのだと理解した。   まず、スプーンの使い方と熱い物の食べ方を実演してから、サラに模倣させる。   最初は戸惑っていたサラだったが、食べたことのない味に驚いた。パクパクと口に運び、瞬く間に皿が空になる。   「食ったら寝る」   ベッドに横になると、サラも横になる。   目を瞑って数分、サラから寝息がしたのを聞いてから桜も眠りに落ちた。
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