52人が本棚に入れています
本棚に追加
「サクラ、お腹、すいた」
「買い物ついでにどっかで食うか。とは言え、お前をパジャマ姿のまま連れ出すのはな……面倒だがアイツに頼んでみるか」
できることなら関わりあいなりたくない奴ベスト10に入るんだが、背に腹はかえられない。
サラを連れ、家を出る。
スタスタ、ペタペタ。
後ろをついてくるサラは素足だった。
一度家に戻ってサンダルを履かせ、また外に出る。
オレの部屋から一番遠い、二階の最奥にある部屋の前まできた。
古いドア。それは全部屋共通なんだが、この部屋のドアにはなにかのアニメのキャラのポスターがでかでかと張られている。
目障りなのでポスターの端を摘んで斜め下に引き裂く。
すると中から重戦車が二足歩行でもしているのかと連想させる重い足音がした。
ドアが開く。
「せ、先輩! インターフォンがないからってポスター破くのやめてください!」
鍋汁がきた。訂正すると中から出てきたデブの汗が飛んできた。
中年太りを越えたタプタプ肉体、なぜだか息が荒く頭に巻いたバンダナに汗の後がしっかりとついている。
「こ、これで通算何百枚破られたことか!」
「すまない、不愉快だから」
「そ、そうやって大人は我々を認めようとしない! あ、新しい文化を認めない!」
簡単に言えばコイツはアニメオタク。しかも二次元の女しか愛せなくなるほどの超重度患者。いちおう『罪人』。
「すまない、不愉快なんだポスターもセットで」
「も、も!? ポスターとセットにされたのはもしやもしや! て言いますかその子だれですか!」
俺の背に隠れたサラを指差す。その指を掴んで横に捻っておく。
「アギャハァァァァ!!」
折れてはいないのにいちいちオーバーリアクションな奴だ。
「実は今日わざわざこんな部屋まで来たのには理由がある」
「せ、先輩指! おれの指曲がって!」
「男なら我慢しろ。お前の能力でコイツに合う服を作ってもらいたいんだ」
人の話も聞かず喚き騒ぐ指の曲がった男。
仕方なしに曲がった指を掴んで、正しい方向に曲げてやる。
ゴリッ、
悲鳴さえあげずに座り込むデブに、背中にくっついて震えるサラ。
「サラ、紹介しておこう。小島正吾(こじま しょうご)、生粋のオタクであまり近付くのは関心しないからな。能力は説明より見せたほうがはやいな。早く実演しろ」
最初のコメントを投稿しよう!