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「サクラ、ふく、ふく」
家に戻るなり玄関で脱ぎだす愚行で俺を困らせる。
ボタン一つ外すのにてこずるおかげで愚行をとめる。
「早く着たい気持ちは考慮してやるが、オレの目の前で脱ぐな。わかったか?」
ニパッと笑顔を浮かべ、またボタンを外そうと努力を始める。
全然俺の言葉を理解してないか無視したかだが、出来れば前者であって欲しい。
「サラ、ストップ」
一時停止。
一番上のボタンを外してやる。
すると関心したように頷く。
「ボタンはこうやって外すんだ。あとは一人で出来るな」
またボタンをつけなおし、大量の服を持たせ、背中を押してサラの部屋に押し込みドアを閉める。
「サクラ! ヤー!」
サラがドアを叩いて抗議してくるが、無理だ。
リズム感のない大太鼓演奏。
ババアでも呼んできたほうがよかったか。
「ヤー! ヤー、ヤー……うぅ」
ドアの向こうから抗議がすすり泣きに変わった。
仕方なしにドアを開けた瞬間、脱兎のごとくに部屋から出てきたサラを受け止める。
「ヤー……一人、ヤー」
溢れでる涙をボロボロ溢しながら、俺を逃がさないように両手で背に回してがっちりと捕まえる。
「すまない、もう少し配慮すべきだった。ババアのところに行くぞ」
落ちた服を拾おう屈もうとするが、サラが邪魔で屈めない。
サラは、眉間にシワを寄せて怒っていた。
涙に濡れた目を親指の腹で拭ってやり、頭を撫でて落ちたままの服を指差す。
「服拾わないと、サラ着たいんだろ?」
服と俺を交互に見るが離れようとはしない。
「逃げたり閉じ込めたりしないから拾おう、な?」
やっと納得してサラが離れた。かと思えば片手でしっかりとオレの服を握っていた。
少しでも俺を信用してくれただけでも進歩か。
屈んで落ちた服を拾っていると、片手ながらもサラが手伝う。
服を広い終え、ババアのいる一階管理人室に行こうとするが、サラが墓石みたいに動かない。
真っ白い髪を震わせ、目に涙が溜まり始めた。
「どうした? これからババアに着替の手伝いしてもらいに行くんだぞ」
首を横に振って嫌がる。
ぐいぐいと引っ張られ、サラの部屋に連れこまれる。
「俺に着替を手伝えって言うのか?」
「サクラ」
うんうんと頷く無自覚爆弾発言魔。
頭痛がしてきた。
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