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暗闇に灯るランプが一つ。
額から右目を通り、頬までを縫い傷のある顔が、ボンヤリとランプに照らされる。
世間を歩けば後ろ指を指されるであろう顔をのせるのは、小太りした幼稚園児くらいの体だ。
暗闇をランプで照らしながら小走りで進むと、猛獣を入れるような鉄の檻の前で止まる。
ランプで照らすと、白い何かが檻の中で蹲っていた。
「今夜の客は大企業の社長さんだ。騒いで、楽しませてあげなさい」
卑しい笑みを浮かべて小太りの男は来た道を引き返す。
暗闇に光が射す。
長方形をした光。それは開けられた扉から射し込む電球の明かりだった。
檻の中にいる何かは、身を震わせる。
「何をしても構いませんが、最後には必ず、殺してくださいね」
最後の部分を強調する。
荒い息をしたスーツに身を包み、片手には不釣り合いな金属バットを持った中年男性が暗闇に入る。
扉が閉められ、光の無くなった暗闇には中年男性の荒い息が良く聞こえる。
「遊ぼうか、子猫ちゃん」
持ったバットを振り回し、男は暗闇を進む。
「早く楽しませてくれよ! いくら払ったと思っている!?」
進むにつれて檻に風を切る音が近付く。
ギィン、
金属バットが檻に当たって金属音が部屋に響く。
「子猫ちゃん見ぃーつけた」
男は、手探りで檻の入口を開けて中に入る。
狭い檻、中にいた白い何かを踏んだ。
「高い金払ったんだ。存分に楽しませてくれよ!」
蹴り飛ばし、覆い被さる。
男を押し退けようとする二本の腕、白い何かは人だった。
弱々しい抵抗は意味をなさず、男の手が人の体に触れる。
明らかにモラルに反した行為であるが、これを通報する者も罰する者もいない。
服を破き、男は更に興奮する。いつの間にか出た鼻血が檻を汚す。
凌辱と呼ぶその行為が今まさに始まろうとした瞬間、暗闇に舌打ちが響く。
「誰だ!」
興を削がれた男は、狂ったように檻から出るとポケットからジッポを出して火を点ける。
小さな火が男の顔と、銃口を照らした。
「……え」
「死んどけ、ゲスが」
銃口が一瞬だけ光、男の額に穴が空く。
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