白髪の人形

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銃声が響き。扉の向こうから重い足音が聞こえる。   銃を扉に向け、引き金をひく。   扉を開けた小太り男の頭を銃弾がかする。   「チビが」   瞬時に標的の位置を補正して引き金をひく。   銃弾が小太り男の額を貫通し、後頭部が弾けて脳が飛び散る。   一秒以内の早業で命を奪った銃の持ち主は、ため息を吐く。   「慣れないな」   小太り男を一発で仕留められなかったことを反省する。   扉から入る明かりに照らされた檻に近付き、入口から手を伸ばす。   手は、蹲って震える白髪の人の服を掴むと、無理矢理中から引っ張り出す。   「たくっ、ババアの依頼内容聞いとくべきだったな」   檻から出しても、蹲る白髪にまたため息を吐く。   しゃがみ込み、蹲る白髪の体を起こす。   破かれた服の間から、胸にある膨らみを見て、目を背ける。   「あーすまない」   一言謝る。   持った銃が光り出し、弾けて消えた。   「俺はもう行く。もう警察が来るだろうから全て話して保護してもらえ」   励ましを込め白髪女の肩を叩き、立ち上がる。   コートを翻し、光に向かって歩いて行く。   頭の中身が無くなった小太り男を横目で見る。   (これだけのことを行うから『罪人』かと思ったが違ったのか? ま、どちらにしたってこの結果だったな)   半秒にも満たない思考でまとめると視線を前に戻す。   脳と血が散乱した廊下を平然と歩く。   踏み潰した柔らかい脳の感触も気にもせずに出口に歩を進める。   ペチャ、ペチャ、 水溜まりでも歩くような音に振り返る。   白髪女が汚れた廊下を抜けて、歩み寄ってくる。   「警察に保護してもらえって言っただろう」   白髪女は、首を横に振って眼前の男服の掴む。   「連れて行けと?」   今度は首を縦に振る。   男は、ため息をついて白髪女の手をとる。   「女を見捨てたなんてババアに知れたら俺の居場所がなくなるよな」   苦笑しつつ、白髪女の肩にどこからともなく出したコートをかける。   「俺の名前は桜だ。お前の名前は?」   白髪女は首を傾げた。
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