白髪の人形

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「ご苦労様。どうだったかし……あら?」   おばさんの顔の割に細い目が、桜にお姫様抱っこされた女を視認した。   「やっぱり……いいわ。桜ちゃんも訊きたいことがあるでしょうし、入って」   「ああ」   桜は、部屋に入ると顔を引きつらせた。   眼前に豪邸の玄関と比較しても負けないくらいの白い玄関であった。   桜は、そんな見た目と中身の違いが激しい建物より、壁に架けられた絵を見ていた。   「ルルとリリが描いてくれたのよ。もう私の宝物だわ」   うっとりと絵を見るおばさん。   絵は、クレヨンで描かれた人の形とは似て異なる、単純に言えば幼稚園生が描いたような絵だった。   「美化しすぎだろ」   「何か言ったかしら?」   「いいや、あの二人は寝たか?」   「桜がいないーって二人で大騒ぎしたあと疲れて寝ちゃったわよ」   おばさんの苦笑を見て、その大騒ぎの度合いを想像して桜も苦笑する。   「とりあえず、その子をお風呂に入れるから居間に行ってくれるかしら」   「ああ、任せた」   白髪女を下ろし、左に歩いて行くが前に進まない。   振り返ると白髪女が服を掴んで不安そうに桜を見ていた。   「あー……ババアは良い人だから怖がるな」   それでも服を離さない白髪にため息をついて、服を掴む手を、手で包む。   それをマジマジと見る白髪、包んでいた手を離して今度はババアと呼ぶ人と握手をした。   白髪はそれを見て、服から手を離す。   「お前に変なことをするようなババアじゃないから安心しろ」   肯定の動作を確認すると、おばさんに連れられて白髪は右のほうに歩いて行く。   「話せば分かる奴か」   笑いつつ、左のほうに行く。   その先には広い居間があり、来た一方とは別の三方にもドアのない入り口がある。   「あ?」   居間に置かれたソファーで、寝息を立てる子供達を発見した。   一人用に二人で座り、睫毛を濡らした女の子であった。   濡れた目を指の腹で拭い、二人まとめて抱き上げる。   起こさないようにゆっくりと歩いて、居間の横にあるドアのない部屋に入る。   そこには大きなベッドが一つ、床には玩具が散らばっていた。   玩具を足でどかしながらベッドに辿りつき、二人を置いて布団を被せる。
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