序章

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夢を みる 悲鳴をあげれない程の恐怖感と 身を切り裂くような失望感 目の前のそれから逃げることも戦うこともできずに、ただ、顔を上げるだけで精一杯だった。 漆黒の闇と白銀の月を身に纏う、目の前に立ち塞がる者の名は──── 「シェゾ…」 まだ覚めないまどろみ中で無意識に彼の名を紡ぐ。 元気印の魔導師の卵、アルル・ナジャ。その面影はなく、見せるのは陰りのある顔ばかり。 彼の闇の後継者は姿を消した。 「今は身を引こう。…だが、忘れるな、アルル・ナジャ──お前は俺のモノ、だ」 そう少女に告げて、 今日も少女はダンジョンに潜る。 それは彼女を知る者なら誰もが疑問にも持たぬ行動。 だが一部の…ほんの一握りの者達は察していた。 いつもと変わらぬダンジョン探索 いつもと変わらぬ笑顔 いつもと…変わらない? そんなのは見せかけだけ。そんな筈はない。 闇の者がいない。 いつも変わらず、形はどうあれ、確かに彼女のそばには彼がいた。 それは確かな違和感。 少女がダンジョンから出てくる。 一瞬、ほんの僅かだけ下唇を噛み締め苦しい表情を示す。 だがこちらの視線に気付くと何事もなかったかのように満面の笑みを浮かべてみせる。 仮面のような仮染めの笑顔を…。 .
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