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荒野――としか言い表せないほど、その地は荒れ果てていた。
吹き荒ぶ風は悲しみを訴えるかの如く、止む気配を見せない。
曇り空は荒野に闇を与え、より深い悲しみを見せる。
「酷いものですね」
若い男の声が荒野に響いた。
途端に、吹き荒ぶ風が止まった。
「全くだ。あんなに綺麗だったこの地が、こんなになっちまうとはな」
さっきとは違う、別の若い男の声がした。
途端に、暗かった空に光が差し込む。
光は次第に広がり、残酷な光景を照らし出す。
数え切れぬほどの死体……だがそれは人の姿とは違っていた。
人間ではない何か……無残な死体の背中には白い羽や黒い羽が生えていた。
そのほとんどが真っ赤な血に染まっていたり、もぎ取られていた。
「馬鹿な人たちです。必死に戦って、死んで、何が得たかったんでしょうか?」
嘆く男の姿も、人とは違っていた。
白い羽に白いローブ、手には弓、天使のような姿をしている。
「知らねぇよ。戦う理由、意味、結果、全てだ。何一つわからん」
この男も人とはかけ離れた姿をしている。
黒い羽に黒いローブ、手には槍、悪魔のような姿だった。
互いの姿を初めて認識し、二人は相手の手に持ってある武器を見た。
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