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其れを見て、私は「ああ、またか――」という歪んだ感想しか抱かなかった。何故なら其れは私が嘗てこの魔眼――邪気眼、と世間では呼ばれている。所謂「不可視」つまり妖の類を「可視」に孵すという性質を持った『メ』のことだ――を用いて完膚無きまでに潰し、捻り、解体し、刻み、侵し、ありとあらゆる破壊的活動の一切を享受したモノの一ツだったからだ。
あの時私は彼を世界の敵――大袈裟な物言いだがそれはけして不足せず、むしろ彼を形容するに値する言葉を私は未だ識らない――とみなし、『此の世の夜に非ず闇総てを伐つ』という我が組織の最大にして最高なる原則の下に、彼を『断罪』した。彼の犯した罪は数知れず。其の罪の数多は彼自身を崩壊させるまでに幾らも足らないものはない。
だが――『彼』は現在私の目前で蠢いている。嘗てと同じく汚らしい触手は私の視神経を害した。まったくこの輩はもっとスマートに生きることは出来ないのだろうか。否、出来ないからこその「不可視」なのだ。そら、学習という言葉を知らないかのように触鞭を此方に走らせている。
「――貴方は断罪に値する」
後進。速度を宿した鞭は一瞬前までの私を薙払う。みつしり。嗚呼、あれは蜘蛛だったのか――
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