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困ったように目を逸らし、再び視線を戻した大志の目に映っていた光景は不思議なものであった。
「じゃあ、これを」
そう言って差し出したのは、手の平大の六角柱にカットされた綺麗な水晶。
「これを誰かに見られないような所にセットして」
「セット」という言葉が妙に引っかかったが、その水晶を吸い込まれるかのように手に取ってしまっていたので、反論する気になれなかった。
「え……? あ、うん」
しどろもどろになりながらも、了承の言葉を返す。
すると、
「それじゃ」
「お、おい!」
沙羅はそれだけ言うとスタスタと足早に去ってしまった。あまりにもいきなりの方向転換だったせいで、大志も追いかけることができない。
ケータイの番号すら聞いてないのに……と思ったときには既に遅く、一人ため息をついた。
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