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そして、訳のわからない異空間(仮)の旅は始まったのである。
「うわああああああ!」
大志の体は真っ暗な虚空の中をものすごいスピードで流されていた。
真っ逆様に飲み込まれた筈なのに、なぜか横向きに流れている。
(ゆ、夢だよな、これ……!?)
五分くらい流されていただろうか。3D酔いに近い要領で少し気分が悪くなって来た矢先、流されている方向に小さく光りが見えた。
(ん? 何だあれ‥)
と思った瞬間、光りは自分の視界一杯に一気に広がり、長い旅の終了を告げた。
「ハゴッ!?」
情けない声と共に、どこか部屋へ転がり込んだ。もとい、顎から突き刺さった。
「うぅ……ここ、は?」
キツい痛みを感じている顎を擦りながら、まだ回っている目で辺りを見回した。しかしそこは自分の部屋ではないどころか、自分の知っている場所でもない。
RPGに出てくるような、西洋風の城の一室だった。白塗りでもしたかと疑いたくなるような綺麗な石の壁に包まれ、向かって右側にはドアがあり、目の前には大層なベッド、そしてすぐ左前にはどこかの社長が使うかのようなデカい机がある。
後ろを振り向く。自分が突入してきた方向だ。そこには、石造りの暖炉より遙かに縦長の、丁度人一人入れるスペースはある穴だった。
「……あ、G-SHOCK」
無意識に掴んでいたらしいG-SHOCKに目を落とす。
それでさらに驚愕した。
「何だよ、これ……」
それはなぜか一秒を刻む速さが異常にゆっくり、まさに十秒に一秒の速さで刻んでいたのである。
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