青いクレヨン

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だして…ここからだして。あやまるから。だからここからだして…。 『いい物件ね。広すぎず狭すぎずで。避暑にもよさそうだし。』 『今秋だけど?』 『いーの!秋には秋の景色があるし、冬には冬の景色があるの!海が近いから一見避暑に良さそうだけど、四季を通して楽しめる場所じゃない。』 『ではご契約なさいますか?』 『はい!』 『…缶詰になるために別荘買うなんて、作家さんは羽振りがいいわね~。』 『何いってんのよ。しっかりくっついてきておいて。どうせ無償で貸してもらおうとか思ってるんでしょ。』 『ばれてたか。』 ここは人里から少し離れたところにある小さな別荘。普段はその人里よりも遠い場所に住んでいる。小説家という職業柄、缶詰になれる家以外の場所を求めていた。この別荘は、家から車で2時間ちょいで着く。なかなかの好条件だったので、即契約したのだ。 『でも1人でこんなとこ…よく過ごそうと思うよね。』 『人に会いたくないからここで過ごすのよ。』 一緒に別荘を見に来たのは不動産屋さんと妹。不動産屋さんは契約がとれて機嫌が良さそうに見える。妹は無償で借りる予定の別荘の下見に精を出している。
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