始まり

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身長は中くらい。オレンジ色のつなぎに身を包み襟や膝小僧の位置には缶バッチやワッペンなどが施されている。身長に釣り合ったサイズのつなぎと言った感じで、足元にズボンのたるみもさして見当たらず全体的にスリムな印象を受ける。  悠と秋吉は生まれた時からの大親友だ。いつも一緒に時を過ごし、離れている時でも携帯電話で連絡をとるほどに一緒にいないと落ち着かなかった。 「ほんまごめんなあ、急に空が見たくなってん。メールも忘れてたわ。ごめん」  完全に自分のミスだと平謝り状態の秋吉は、悠の方に向き直り正座をして顔の前で手を合わせた。  秋吉はというと、こちらは深緑色のつなぎを着用している。悠のつなぎと同じように個性的なのだが、缶バッチもワッペンもついてはいない。その代わり、所々に本人の物であろう大きな手形が色とりどりに押され、加えて絵の具のシミが深緑色のつなぎを、まるでキャンパス代わりに使い、絵を写すかのように染めていた。  髪は栗色で少々赤混じりのようにも見える。大きなツバつきベレー帽を深く被り、その上から大きなレンズの光るゴーグルを装着している。悠よりも小柄で華奢な体つきを隠すかのように、自分の身長とは不釣り合いなほど大きなサイズのつなぎを纏い、袖口も足元も、余った服がだぼついていた。 「別にいいけどさぁ‥ほら、早く戻ろう。」  悠は少々不服そうにしながらも秋吉にシェルターへ帰ろうと促す。政府に見つかったら大変なことになる。子供だからそう酷くはないだろうけど、軽くても一時間以上のお説教があることは目に見えている。秋吉のこの脱走は今回が初めてではないから、尚更その処分は痛いほどわかっていた。
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