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のっそりとゆっくり立ち上がった秋吉を急かす様に、悠は秋吉の服を引っ張った。
「引っ張るなや!ハル!」
引っ張られてバランスを崩した秋吉は足をもつれさせながら一歩二歩と大股で足を進める。今にも転びそうな秋吉の事など悠は構いもせずに服から手を離さず、一人先へと足を運ぶ。
悠の、日光で脱色された金色の髪が風にそよぐ。
外界の世界の風は気持ちがよかった。シェルターの中では風など決して吹かない。
今さっきまで眺めていたどんよりとした空模様も、シェルターでは決して見ることが出来ない。シェルター内ではいつも快晴の空が天井に映し出され、気候はいつも温暖で風など吹かない。曇りがなければ雨もない。一年中春といった感じで、夏も秋も冬もありはしない。
ーー四季折々とか言うのを聞いた事があるけれど、そもそも「冬」ってなんだ。
一度外界の世界を知ってしまった秋吉には、いくら快晴の空を眺め、どんなに気持ちのよい天候でも、魂のないロボットの様でつまらなくて仕方が無いのだ。
太陽の機嫌がある外界の方がよっぽど人間的で自然なことだろう。
さて、悠に引っ張られるがままにシェルターの入り口へと踏み込むと、そこでは一人の少年が腕を組んで立っていた。
「だからお前はバカだというんだ。絵など家で描け。バカには想像力と言う物も無いのか」
腕を組んだまま壁によりかかり、入り口をふさぐ様に長い足を投げ出しながら少年は言った。
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