第1章 幸せの約束 1

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ここは南の国の楽園。 ハワイ、オアフ島。 真っ青な青空に入道雲が浮かび、何処までも海が広がっている。海と空の境界線は、いつも曖昧で、その景色は何度見ても飽き足りない。世界中の人々が、自由を求めてこの地に訪れる南国一の楽園は、東京やニューヨークとは、正反対の国だ。 シャワーと呼ばれる通り雨の後は、アスファルトに微かに雨の匂いが混ざる。そして、シャワーが降り注いでも誰1人、傘はささない。 そう。台風でもない限りは、傘なんてここでは不要だ。 それがまたハワイの風情でもある。 * 早朝6時になると、いつものジャズがコンポのスピーカーから自動的に流れ始める。 最近あたしが覚えた曲で、今一番のお気に入りのサックスナンバー。 《ディス・マスカレード》 この曲で、一日が始まる。 甘い甘い、サックスのスローナンバー。 歌ありのものや、ピアノの演奏もあったけれど、サックスがやっぱり1番好き。今は、あたしはバンドやジャズバーなどでは活動していないけれど、時々マンションの下のプールサイドで、サックスを吹く。 聴いてくれる人は、ただ一人だけでいいから………。 ベッドサイドには飲みかけのカリフォルニアワインのボトルと、二つのワイングラス。 冷めたフライドポテトと、食べかけの野菜スティックが白い皿に残っている。 あたしはゆっくり目を覚ますと、隣にいたはずの(たくみ)がいなくて、眠気眼の瞼を擦りながら、起き上がって辺りを見渡してみた。 するとリビングの方でカチャカチャという音が聞こえてきた。
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