奇襲

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「うぉっ!!!!」  突然、俺の左目が鉤爪の様な手をした太くて黒い腕を捉えた。それは俺の顔目掛けて横薙に迫ってくる。  俺の体は考えるよりも先に反応し、仰け反る様にそれをかわした。 「……あ、危ねぇ」  大きさこそ違うが、全てを噛み砕いてしまいそうな大きな顎、頭の左右から垂れた長い触覚、幼い頃見慣れたフォルムだ。  ……そういえば、一時もためらう事なく沢山潰したな。水責めにもしたっけ。  黒い楕円状の体から生える黒い腕は、俺の首から数センチの所で空を切ったらしい。風を切る凄まじい音が聞こえた。  今の俺はさしずめ、イナバウアーを繰り出すフィギュアスケートの選手。  頭の中で巻き起こる大喝采に酔いしれているのも束の間、ヤツの足音が聞こえてきた。  ……近づいてくる。  俺はすぐさま我に返り、ヤツに背を向け力の限り地面を蹴った。
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