†吸血鬼†

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体が浮いて、何故か天井にやって来た私達。 未だに心音が治まらない。 梅雨の時期だからか 少しジトッとした空気が肌を撫でる。 「えっと、つまり壱は、私に絶対服従てこと?」 「まぁ、そ言うことになるかな」 笑顔で答えるのは、 何故か当の本人ではなく 劉と言う男の人だ。 私はこめかみを押さえる。 どうやら、彼は吸血鬼で 私の血を必要としているらしいのだ。 誰でもいいんじゃないの?と 思わなくもないのだが、 昔々に、吸血鬼と人は誓いを交わしたらしい。 力を与える変わりに 血を与える約束を。 極一部の人間達と。 「無差別に人を襲われちゃ困るだろ?」 そう笑顔で言う劉さんは、少し怖かった。 「その指輪が、何よりの証」 指にはめられた、2センチ幅くらいの大きめの指輪を見る。 十字架刻まれているんだけど、 それは十字架に弱い吸血鬼を 従わさせる為なの? 「弱い訳あるかよ。馬鹿女」 「なッ!誰が馬鹿…!」 「さあ、紗綾ちゃん、そんな時は指輪に触れてー命令!」 左手を右手の指輪に触れさせられる。 「………《飛べ》」 「うおっ?!」 何かにグイッと引っ張られたようになって後ろのめりになりながらも上空に浮かぶ壱。 後ろにある満月が、 壱を覆う。 .
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