†吸血鬼†

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「そうやって、指輪に触れて、命令すれば壱は従わざるを得なくなるんだ」 何とも言えない爽やかな笑顔の劉さん。 「じゃあ、さっき意志が読み取れたのは…」 私が十字架が苦手、とか考えていたときの話。 「あれは、指輪を通じて、紗綾チャンの『感情』が、壱に伝わるんだ。その反対は、ないけどね」 それが理不尽だと思うのは 私だけではないはずだ。 「言葉が伝わる事がないから、安心していいよ」 いやいや! それで安心するのもどうかと思う。 しかし、指輪を引き抜こうとしても、やはり抜けないのだ。 「つか、早く下ろせ!」 少し上空からの声で、 私は一言謝ってから、指輪から手を離した。 それが、命令解除になるらしい。 壱がゆっくりと下に降りてくるのを見ながら、私は少し感動を覚えた。 しかし、そんな呑気なことは言っていられない。 私は劉さんに向き直る。 「これって、いつまで続くんですか?」 「君が死ぬまで」 サラリとまた笑顔で怖いことを言う劉さん。 爽やかだけど、ドス黒い…。 私は苦笑を浮かべる他ない。 「辞めることは…」 「不可能」 ……ですよね。 と、心の中で相槌を打つ。 そんな簡単に行くはずがない。 壱を見て、溜め息をつく。 「オイ、てめー」 目が合った瞬間に ガンをとばされてしまった。 吸血鬼でなくても怖いが 底光りする目はもっと怖い。 .
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