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私は息を呑んで、
固く閉じた口を開いた。
「壱が言いたくないことを無理矢理言わせたくない」
「 、 … 」
風が強く私達の間を吹き抜けて、壱の言葉も、表情も分からなかった。
「え?何?」
私が次に目を開けたときには
なにも変わらぬ壱が、
そこに座っているだけだった。
「別に」
壱はぶっきらぼうに言ってから目線を落として言った。
「壊れて死ぬだけだ」
「え?」
「《犠牲者》を見つけられなかったら。…そのまま、壊れて、死ぬだけだ」
サアッと今度は優しい風が、壱の髪を撫でる。
壊れて、死ぬ。
人でも
吸血鬼でもなく
ただ、壊れて…死ぬ。
……………
死
.
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