†序章†

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「受け止めないといけないよ。俺達は、そう言う風に出来てるんだ」 悲しむ風もなく、サラリと言う黒髪の男。 「はっ、生まれて来なけりゃ良かったよ!」 それに対し、そう言って更にギュッと、壱と呼ばれた男は身を縮める。 その様子に、扉にもたれ掛かる男は、一つため息をついてから、何も言わず扉を閉めた。 そして、長い廊下を歩きながら、 側にあった薔薇に触れる。 「壱、君にはやってもらう事があるんだよ…」 フッと、薔薇が黒くなり、萎れて真っ赤な絨毯の上に落ちた。 《生まれて来なけりゃ良かったよ》 壱の言葉を思い返し 嘲るように笑みを浮かべる。 「吸血鬼自体、生まれてくるべきじゃ、無かったんだ」 そんな言葉を残して、コツコツと、靴の音を響かせ、男は1人暗闇へと消えて行った。 .
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