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暗くて広い畳の部屋の真ん中に、取り残されたように、ポツンと座る私。
元々、母と二人で住むのには広かった。
だけど
その母さえ居なくなって
大きな屋敷は更に、
その大きさを増した。
悲しみに景色がぼやけ、ため息をつき、ゆっくり立ち上がった時、ポケットから何かが落ちる音がした。
拾い上げてみると、それは母が死ぬ間際にくれた指輪だった。
『紗綾(サヤ)を助けてくれるから』
そして、それは母の最期の言葉となった。
細かな細工が見事な、金色の指輪を見ていると、無性に泣き出しそうになって、私はゆっくりとその指輪を右手の薬指にはめた。
「でか…」
ユルユルで、逆さまにすれば直ぐに取れてしまいそうだ。
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