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一月十七日。夜中から、お腹に痛みがあった。寝れないまま、朝食を食べ、トイレに行きたくなり、看護婦さんを呼び、ベッドを下げてもらい、起こしてもらう。ベッドから下り、立ち上がった瞬間、大量に何か出た感覚に足元を見た。ふとももを伝って流れた血が床に広がる。
何が起きたのか分からず、頭が真っ白になった。
『看護婦さん呼ばないと…』
ナースコールで看護婦さんを呼ぶ。すぐに駆け付けて来てくれた看護婦さんは、動揺している私に「大丈夫やから」と声を掛けながら、ベッドに寝かされ、汚れた下着やパジャマを脱がしてくれた。
数人の看護婦さんがバタバタと動き回る。いつもの出血の時とは違う様子に不安を隠しきれない。
先生が来た。
不安の予感が的中した気がした。
先生の内診が始まった。表情は厳しい。
「陣痛が来てますね。今日、分娩になると思います。家族に連絡してください」
不安から恐怖に変わる。
赤ちゃんはまだ、六ヶ月の終わり。まだ、内臓がきちんと出来てない。肺もきちんと出来てないから、自力での呼吸が出来ない。今、生まれても生存は厳しい。
内診の度に先生に言われて来た説明が頭を過ぎる。
赤ちゃんごめんね…
奇跡が起きますように…
祈る思いで胸に手を当てた。
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