第二章

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再びがさりと音がした。 今度は複数………それも一ヶ所ではない。 彼は魔獣の群れに囲まれたのである。 群れをなす魔獣は素早さと鋭い爪や牙を武器に獲物を狩る。 大抵はおとなしい大型草食獣を狙うのだが、大群で生活するため、飢えが早い。 故に通りかかった者は何でも襲うのである。 そんな魔獣に一人で囲まれたら、余程腕のたつ者でないと攻撃を防ぎきるのは難しい。 仮に脱出出来たとしても、腕の一本や二本は持って行かれる事を覚悟せねばならない。 だが彼にそんな実力は無い。 逃げ切る事も難しい。 正に絶体絶命である。 彼は魔獣達の腹に収まるのを覚悟した。 そして遂に魔獣達は狩を始めた。 獲物が逃げぬよう円陣を狭めながら、先行の数頭が跳びかかる。 牙を剥き足を潰すべく、正確に狙いを定めて。 そのぎらつく牙が彼の足を噛み砕くと思われた瞬間、目標物を失った牙がかちんと虚しく音をたてた。 目標物を失ったためか、思った通りに事を運ぶ事が出来なかったためか、魔獣達の間に動揺が走る。 周囲を見渡しても見当たらず、狩に失敗したという事実を叩き付けられただけだった。 暫く先程の獲物を探してうろついていたが、やがて諦めて散々に去っていった。
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