第二章

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姿を消した彼は何処へ行ったのか。 それは先程彼がいた場所から空を仰ぎ見ればわかる事だった。 そこには彼ともう一人、くすんだシルバーがいた。 正確には、木の上でくすんだシルバーが彼を抱え、声を発しないよう口を押さえていた。 「………むぐ」 突然の事で彼自身も頭がついて行っていない様である。 ようやっと理解した時には、彼はソレによって地面に下ろされていた。 「ファングに囲まれるとは、随分と運の悪い奴だな」 「え、あ………」 深紅の瞳が彼を見た。 それは同情や哀れみ以前に、呆れていた。 「何故私を追って来た。 ここはお前のような未熟な者が一人で抜けられる様な森ではない。先程身をもって実感しただろう」 「………」 「用が無いなら帰れ。森の外まで送ってやるから」 彼は初めて間近で見た深紅の瞳に見入っていたのだが、はっとして口を開いた。 ………焦り半分といった声色だったが。 「あんたの弟子になりたくて追いかけてきたたんだ!」 「弟子?」 またか、とソレはうんざりした様だったが、話は最後まで聞いてやることにしたらしい。 「俺、東雲ってんだ!16歳!島国育ち!」 「………」 「あんたに憧れてこの大陸に来たんだ!」 そんな奴、腐るほどいる。 ソレはそう思ったが、口には出さなかった。 「お願いだ、俺をあんたの弟子にしてくれ!」 「断る」 「どうして!」 「お前のような輩は今まで大勢いた。だが俺は他人に剣を教えるつもりは全く無い」 他をあたれ、と冷たく突き放すも彼は退かなかった。 半端な覚悟で弟子にしてくれと言っていると思われたくなかったのだ。 今まで築いてきた全てを捨てる覚悟があると、何があっても付いて行くと、必死になって頼み込んだ。 退くつもりなど、無かった。
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