第三章

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丘に近付くにつれ、辺りの視界が悪くなっていく。 日が傾くのもあり、辺りはどんどん暗くなる。 時々聞こえる狼型の魔獣の遠吠えが余計に不気味さをかもし出していた。 遠吠えが聞こえる度、東雲は前を行くソレにしがみ付いては振り払われていた。 「……小心者」 「だ、だって怖いだろ!」 「東方の島国に住む戦士は恐れを知らぬと聞いたことがある」 「……俺まだ元服迎えてそんなに経ってないし」 オォ────ン……… 「ひぃぃぃぃ!!」 「…………ハァ」 こんな調子では先が思いやられる、とソレは溜め息を付いた。 丘を突っ切るまでは後少し。 日は既に地平線の下に沈んでいて、東の空には星が輝いている。 今頃は丘を越え、麓の村に着く予定だった………筈。 そもそもソレ一人で旅していれば予定が狂う事は無かったのだ。 ソレは麓の村で休む必要など無いのだが、旅慣れていない年若い者を連れての旅だとそうはいかない。 命を預かった以上、それ位はしてやらねばならないという一種の騎士道のようなものから来る行動だった。 (昔より随分丸くなった、か………) 歩みは止めず、後ろにへばり付く彼に悟られず、ソレは自嘲的な笑みを浮かべていた。
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