第四章

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東雲がソレを見付けた街を出てから、五つの集落を抜けた。 相変わらず無表情なソレの後に続く彼も、幾分か旅に慣れてきた様である。 最初の森を抜けていきなり崖登りを体験したのが大きいのだろう。 「ここが国境だ」 「……随分ショボいんだな」 げんなりとした声で彼は目の前の石碑に視線を向けた。 茶色い苔の生えた古い石碑───と言うよりもただの岩───には国境であることを示す記号が刻まれているだけであった。 彼が幻滅したのも無理は無いだろう。 「こんな地味なもん一つで国境を?」 「当時はここ以外に人が通れる様な道は無かったからな」 「ふーん………」 博識だ。 彼は素直にそう感じたらしい。 ソレは然程気に留めていないが。 「国境の向こうの魔獣共は怪力だが鈍重だ。子供でも逃げられる程、な」 「嫌味デスカ」 さあな、と軽く流されうなだれる彼を無視してソレは石碑の向こうへと歩き出していた。
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