序章

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険しい山脈の頂上、白い外套をはためかせソレは立っていた。 灰みがかったくすんだシルバーが肩の辺りで空を泳ぐ。 そこから覘く深紅の瞳は地平線を見詰めていた。 ソレは今、この世界を両断する山脈の丁度真ん中にいる。 西には青々とした森林が、東には荒廃した大地が、それぞれ広がっている。 ソレは西に向かっていった。 眼下に広がる新緑が目に眩しく、新鮮だ。 先程ソレが立っていた場所に、その場にそぐわぬ騎士の鎧が置かれていた。 内側に彫られた名前らしき文字はかすれていて読めない。 ただ、鎧と一緒に置かれた外套が風に吹かれ、ぱたぱたと音をたてていた。
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