3人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
険しい山脈の頂上、白い外套をはためかせソレは立っていた。
灰みがかったくすんだシルバーが肩の辺りで空を泳ぐ。
そこから覘く深紅の瞳は地平線を見詰めていた。
ソレは今、この世界を両断する山脈の丁度真ん中にいる。
西には青々とした森林が、東には荒廃した大地が、それぞれ広がっている。
ソレは西に向かっていった。
眼下に広がる新緑が目に眩しく、新鮮だ。
先程ソレが立っていた場所に、その場にそぐわぬ騎士の鎧が置かれていた。
内側に彫られた名前らしき文字はかすれていて読めない。
ただ、鎧と一緒に置かれた外套が風に吹かれ、ぱたぱたと音をたてていた。
最初のコメントを投稿しよう!